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Mr.Childrenやスキマスイッチ等のレビューを。

サカナクション 「kikUUiki」

どうも、ゾロアです。

今年ももうすぐで終わりですね。皆さんにとって2017年はどんな年だったでしょうか。

来年もよいお年を!

 

さて、今回はサカナクションのアルバムを取り上げます。

kikUUiki

kikUUiki

 

 《収録曲》

  1. intro = 汽空域
  2. YES NO
  3. アルクアラウンド
  4. Klee
  5. 21.1
  6. アンダー
  7. シーラカンスと僕
  8. 明日から
  9. 表参道26時
  10. 目が明く藍色

 

 

はじめに

2010年3月17日に発売された、サカナクションの4thアルバム、「kikUUiki」。

本作は、先行シングルとして同年1月に発売されたシングル「アルクアラウンド」と共に、オリコンチャートで初登場3位を記録し、過去最高を記録しました。

このアルバムから、サカナクションはますますメジャーなバンドになったと言えます。

 

Wikipedia先生曰く、

タイトルは海水と淡水が交わる水域「汽水域」から創られた造語。

本来相容れない (混ざり合うことのない) ものが混ざり合うところという意味が込められている。

この相容れないものというのは、「サカナクションが出したい音」と「リスナーが求めている音楽」のことで、遂にこれらがひとつに混ざり合う名盤ができた、ということを表していると言われています。また、そのタイトル通り、従来のシンプルなバンドサウンドに加え、それぞれの曲に、あらたに電子音が導入されたほか、今までにないへヴィな楽曲からダンスミュージックなど、今までのサカナクションになかった、幅広いジャンルのトラックがこの1枚に詰まっています。

「GO TO THE FUTURE」「NIGHT FISHING」「シンシロ」の3作は、当時から歌詞の良さは存分に発揮されていた反面、今よりもシンプルで少し荒削りで垢抜けてない印象もありました。(その垢抜けてない感じも、また彼らの良さなわけですが^^)

ただ、この「kikUUiki」は個人的に、サカナクションのアルバムの中でも、格が違う。これまでの実験的要素をさらに進化させたうえ、荒削りな部分にしっかり磨きをかけた、といってはなんですが、これによってサカナクションの一つの集大成になった、といってもいいと思います。もはや非の打ちどころがない、超名曲たちがこの作品につどっているわけです。

 

シングルの「アルクアラウンド」を始め、様々な収録曲が心の叫びを露わにする。

そして、「目が明く藍色」が代表するように、新しいサカナクションの顔が暴れ出す。

 

さあ、全曲解説コーナーへ、レッツゴー!!

 

 

 

1.intro = 汽空域

まず1曲目から、他の作品では聴けなかった「音」がたくさん現れる。

というのもギターや、ドラム、キーボードが、規則性もなく好き勝手に鳴りつづける。

 

いったいこれはどういう状況か? 実はこれは、本作のレコーディング現場なのだ。

その証拠に、よく耳を澄まして聴くと、「壁」のイントロや「明日から」で使用されるシンセサイザーの音など、収録曲のフレーズに類似している音色も登場する。

『kikUUiki』という言葉が生まれたとき、サカナクションとして「これ、いいよね」というときの感覚を一言で言い表せるキーワードが出来た感じだったんです。だからそれを音にしておきたかったし、アルバムの最初にそれを音で説明しておきたかったんです。実はこれはレコーディング現場を僕がiPhoneで盗み録りしていた音なんです。

出典:サカナクション インタビュー|MUSICSHELF

つまりは、このアルバムのオープニングとして、

「本作を通じて、いろいろな音が混ざり合う」ということの、遊び心とも言える感覚をアルバムの最初に表すために、自由に勝手気ままに鳴り響く音を一つ一つ、このトラックに拾い上げたということである。不思議なもので、曲ができる前はただの一音に過ぎないのに、いざその曲が完成されてみると、瞬く間にそれは形あるものに変化し、楽曲において欠かすことのできない重要なパーツへと姿を変えていくのだ。

そのことが2曲目「潮」以降で、証明されていく。

この曲は、本作における、さらにはサカナクションの音楽における、重要な命題だ。

 

この曲の終わりには、「気空域の世界」というセリフが残される。

こうして、全ての音が混ざり合う時間は、始まりを告げたのである......。

 

 

2.潮

名曲。個人的に、この曲を初めて聴いたときの衝撃は凄まじいものだった。

ダークなシンセサイザー「ララララ ララララ♪」と、山口さんを始めとしたメンバー五人の合唱と、大きな手拍子が鳴り響くイントロからこの曲は始まる。この時点でもう既に画期的である。ここまでへヴィでダークサイドで、かつノリの良いダンスミュージックともいえるような楽曲は今までに存在しただろうか? 曲調はどす黒い感じなのに、聴いていると、なんとなくだが、気がつけば無意識のうちに踊り出してしまうかのような。何より驚きなのは、これをアルバムの最初に持ってきたこと。まさに革新的で、今までのサカナクションとは何かが違うと、このイントロだけで悟ることができたのだ。

あと、アウトロの江島さんのドラムも、凄まじい。

 

歩む足跡 足音が泳いでた

つまり誰かがそろそろ突つき出すころ

荒れる波際 浮かぶ木が泳いでた

つまり僕らはそれらと変わらないってこと

飲めば水 出すと唾

山口さんの歌詞は、相変わらず文学性が高い。

とくに、この情景描写にいたっては、息をのむほどにすばらしい。「飲めば水 出すと唾」なんか、どうやったらそんな言葉が出てくるのか。そこから「人は潮 棲む棲む棲む」とつながっていくところも、また秀逸だ。歌詞のよさにおいては、サカナクションの楽曲の中でもトップクラスではないかと思う。

しかし、本当に凄いのはこれらの部分ではなく、

サビに入って、いっきに音が激しくなると同時に歌われる一行である。

 

激しく胸打つ思想に 踊らされ生きてた

ひぃぃぃぃ!!! ヽ(゚Д゚;)ノ!!

怖い。怖すぎる。こんなおそろしい歌詞を書く人間がいたのか。

僕らはいつの間にか、誰かによって正しいとされてきたことに従って日々生きている。でも、やがて僕らは、所詮はそれによって踊らされていただけだと知るようになる。「激しく胸打つ思想」だって、他の人間を洗脳するためのものでしかない。そのときの感動や熱気だって、どうせ自分を騙すためのものでしかないんだ。人は潮のように群れを成しては、誰もが同じように世間の中で踊らされていく。そうして、絶えることなどなく、また人は騙し合い、知らないうちに騙されていくのだ。

自分の中の本当に正しいことなんて、世間の波に埋もれていってしまうんだ。

 

驚いた。実に衝撃的な歌詞だった。

ある意味、Mr.Childrenの「マシンガンをぶっ放せ」以来の衝撃を受けたかもしれない。あの曲は本当に凄まじく、僕の人生においてもとても大事な一曲である。しかし、まさかあれに似た衝撃を再び経験するとは、想像もしていなかった。この時代にこんな曲を歌うバンドがいたのか、と驚きを隠すことができなかったのである。ミスチルも恐ろしいが、サカナクションだって負けず劣らずだ。

もしかしたら、この音楽を聴いている僕だって、踊らされているだけなのだろうか。

いいだろう。いっそのこと、死ぬまで踊らされてやろうじゃないか。

※それにしても、「深海」のレビューを書いてからもう二年か......早いなぁ。

 

 

3.YES NO

合言葉代わりの合図が いつも通り僕を揺らして

合言葉代わりの合図が いつも通り泡になって消える

ファルセットの効いた山口さんのボーカルから、この曲は始まる。

イントロでは、岡崎さんの印象的なシンセサイザー(笛の音)により、いっそ高揚感が湧いてくる。このフレーズに心を奪われた方も多いのではないか。このイントロを始め、曲が進むにつれてドラムや草刈さんのベースが激しくなっていき、キーボードの音も徐々に重なり合っていく。この何とも言えない、興奮というか高揚していく感じが実にたまらない。囁くように静かに演奏される出だしから、全ての楽器が激しく鳴り響くラストまで、ひそやかな盛り上がりを楽しむことができる。

この大人っぽい感じが、ファンの間でも人気が高い要因だろう。

 

そっと君に尋ねるフリして僕は咳した

YES NO 僕らは言う 意味もないのに

心の奥に何か挟まり続けながら話し続けた

やはり山口さんの歌詞は、相変わらずどこか核心をついてくる。

「君に尋ね」ようとしたことがあるけれど、結局は何も言い出せずに「咳をして」その場をやり過ごしてしまう。本当は、もっと伝えたいことがあるのに、もっと知りたいことがあるのに、つい「YES NO」だけの会話を、意味もないのにただひたすら続け、結局は何もわからないまま終わらせてしまう。僕らの会話なんて、そんなものだ。

本当に知りたいことなんて、実際の会話ではそうカンタンに得られるもんじゃない。

 

では、なぜこんな歌詞を書こうと思ったのだろうか。僕が思うには、

すぐ僕は迷う 確かめたい嘘

そっとヒトリゴト言うフリして僕は咳した

すぐ答えを出す癖がついてた

もっと悩める夜に 帰りたくても帰れないから

これは、山口さん自身のことを歌っているのではないだろうか。

特に「もっと悩める夜に 帰りたくても帰れないから」の部分は、サカナクションの状況に当てはめても辻褄が合う気がする。山口さんは、とにかく「歌詞」を書くのに、莫大な時間をかけるとよく言う。「さよならはエモーション」「新宝島」「多分、風。」などがいい例だろう。ツイッターで歌詞が書けなくて苦しいなどの愚痴を吐くこともあれば、「多分、風。」のように歌詞を書き直して発売を2ヶ月延期したこともある。さらにライブで新曲を披露するときも、メンバー曰く「歌詞が本番直前にできることも多くて......」とどこかのインタビューで言っていたような気がする。

この「YES NO」こそ、そういう山口さんの苦しみを表しているのではないか。

だから、日常会話から振り返って、人によって交わされる“言葉”に疑問を持ったのではないか。

 

これも、なかなかの佳曲ですよね。ライブで聴きたい一曲です。

 

4.アルクアラウンド

まあ、サカナクションの原点とも言われている、鉄板の名曲ですね。

これね、僕が個人的にめちゃくちゃ好きな曲なんですよ。なぜかって言うと、元々この曲は僕が小学生で、まだサカナクションという名前も知らなかった頃に発売されて、その当時に「ZIP!」でこの曲のPVが取り上げられていたことがあって。

この山口さんが歩いていく先に、歌詞が浮かび上がってくるという演出にものすごい衝撃を受けたんです。さらにサビのメロディーラインも非常に印象的で。でも当時はこれが何の曲かもわからず、それでもその光景だけは本当に印象に残っていたから、そのまま、何年もの間「あのPVの曲はなんだったんだろう??」とずっと謎のままで

で、今年に入ったころ。サカナクションを聴き始めて間もなく。youtubeでPVをいろいろ観たりして、ある日、この「アルクアラウンド」を再生したわけです。すると、、、

 
サカナクション - アルクアラウンド(MUSIC VIDEO)

これは......あのときのあの曲、あの映像じゃないか!!!

と、当時の記憶が一気によみがえり、そこからサカナクションにハマったわけです。

 

要するに、ある意味この曲は、僕とサカナクションの「出会いの曲」ってわけで。

もう8年くらい前の曲なのか......。あの小学生時代がほんとうに懐かしいですなぁ。(笑)

 

勿論、今聴いても、相変わらずの珠玉の名曲です。

僕は歩く つれづれな日 新しい夜 僕は待っていた

この出だしから、あの印象的なシンセサイザーのイントロが始まります。

この疾走感が本当に堪らない。この高揚感に満ちた演奏が、小学生時代の衝撃をいっそうよみがえらせます。ライブでも非常に盛り上がる定番の一曲です。

僕は歩く ひとり見上げた月は悲しみです

僕は歩く ひとり淋しい人になりにけり

僕は歩く ひとり冷えた手のひらを見たのです

僕は歩く 新しい夜を待っていた

「僕は歩く」「ひとり」のリフレインから、「月」「悲しみ」「冷えた手のひら」といった何とも現実感のある名詞や、「なりにけり」のように古風な言葉まで。

これは高校生の今だからこそわかることでしょうが、本当に魅力的な歌詞ですよね。

やはり山口さんの歌詞は、特にこの曲に関しては、非常に日本文学的です。

何を探し回るのか 僕にもまだわからぬまま

この部分から、サビへとつながっていくところが本当に秀逸なんです。

特にドラムとシンセサイザーが急に激しくなって、ここから生まれる高揚感が、サビの「嘆いて~♪」で爆発。このつなぎ方は本当に凄い。作曲センスの塊だと思う。

嘆いて 嘆いて 僕らは今うねりの中を歩き回る

疲れを忘れて

このサビが、あのPVのワンシーンだったわけですね。昔の僕でもこの「嘆いて♪」の部分だけは鮮明に覚えていました。本当に印象的なメロディーラインですよね。そして改めてこんなにいい歌詞だったんですね。「また歩き始める」と強気な歌詞で終わるところは、ある意味サカナクションらしくない。でも、そういうところもいいのだ。

サカナクションに出会えてよかったと、この曲を聴く度に思うわけです。

 

カップリングの「スプーンと汗」もいい曲なので、是非ご試聴ください!

 

声を聴くと惹かれ すぐに忘れつらつらと

気まぐれな僕らは 離ればなれつらつらと

 

 

5.Klee

イントロのリフが印象的な、ギターロックです。

このフレーズはとてもノリが良く、ライブでもかなり盛り上がる楽曲になっています♪

読めない本 積み重ねて

一人書くんだ 詩を 詩を

 

アンニュイ それのせいにして

アンニュイ 僕は無理をして

「YES NO」に引き続き、またこんなことを言う。

やはり山口さん自身ことだろう。「詩を書く」という表現からすればわかりやすいが、このアルバムには「サカナクション自身のことをネガティブに歌った」曲が多い。

だからか、「無理をして」というフレーズがやけに心に刺さる。

 

知らない誰かが笑って

僕に指を差す 人

これまた、非常に面白い歌詞である。「指を差す人」とはリスナーことであろうか。サカナクションにとっての聴き手というのは、「知らない誰か」であるのは勿論だが、「笑って」「指を差す」という表現。これまた聴き手、すなわち僕たち自身のことを風刺しているように思える。歌い手であるサカナクションにとって、僕たちはそういう存在なのか、と思わされるのだ。これもある意味山口さんにしか書けないと思う。

 

修正 書いて 改訂 眠れずに

この部分で、ギターがいっそう過激になり、ドラム、ベースの音も前面に現れる。

だからクレーの絵を見て 落ち込むのは

僕が擦れたから 擦れたからか

「クレー」というスイスの画家いるのですが、Wikipedia先生曰く、

その作風は表現主義超現実主義などのいずれにも属さない、独特のものである。

とのこと。クレーの絵を見て、落ち込むという気持ちも少し想像がつきにくいものではあるが、このときの山口さんはそういう心境にあったということだろう。でも、実際にその絵を見てそういう気持ちを重ねることも、できないわけではない。これらの絵に隠された“感情”が、この歌詞を読むと少しわかってくる気がするのだ。

本当に暗い。だが、サウンドのせいか力強さも感じる。

 

間奏のお洒落で長いギターソロも、また素晴らしい。

このソロって、山口さんと岩寺さんのどっちがどのパートを弾いているんだろう?

 

だから綺麗でなくていい 僕らしさ見つけたら

それが全て 全ての始まりです

 

 

6.21.1

インストゥルメンタル曲。

出だしのドラムとパーカッションが、とても印象的なロック・チューン。江島さんによって丁寧に叩かれる、単調かつ高揚感の湧くリズム。これが堪らなくいい。

 

草刈さんの渋いベースリフから、シンセサイザーの音がどんどん重なっていき、やがてエレキギターの尖った音色が鳴り響く。山口さんと岩寺さんの、途中でまた何度かエコーの効いたパーカッションが叩かれ、そしてまたギターとベースとシンセサイザーがひとつに混ざって、組み合わさって、非常に軽快かつ、激しい演奏が生み出される。軽快といっても、それは多面性に富んだとでも言うべきか、とにかく見たこともない世界に引きずりこまれるような、そんな期待感や興奮が募り募っていく。

言わば、この曲こそが、「ロック」と「ダンス」の融合なのではないかと、思うのだ。

 

作曲が「サカナクション」名義となっているのは、「いかに、どれだけ“バンドの音”を掻き鳴らすことにこだわったか」、それを聴き手に伝えるためであろう。

この曲はライブの1曲目としても演奏されることがある。それだけこれは、このアルバムにおいては重要な一曲であり、次の曲への期待感を膨らませる役割を果たす、そんなインスト曲ならではの大きな力を持っている楽曲なのだ。CDを聴いているのに、まるでライブ会場にいるかのような、そんな錯覚まで起こってしまう。決して、歌ものでないからという理由で、すぐに聴き飛ばしたりしてはならない。

なぜならこれも、この革新的アルバム「kikUUiki」には欠かせない曲のひとつだからだ。

 

ちなみに、タイトルはライブイベントの「version21.1」に由来するとのこと。

 

 

7.アンダー

名曲です。「潮」と同様にダークサイドで、哀愁漂う雰囲気のバラードナンバーです。

シンセサイザーの淡々としたリフレインから、徐々にダークな音が重なっていく。山口さんの憂欝そうな歌声。そして、サビに入る手前のギターソロ。この頂点に向かっていっきに想いが溢れる感じ。この言葉にならなくて、どうしようもなくやりきれない気持ちになってしまう感じ。これが最高に素晴らしい。あと、間奏でふたたび現れる、物憂げなギターソロも非常に良い。そしてドラムが出現して、ギターがいっそう激しくなり、山口さんは強く叫びだす。

アンダー アンダー ...

このアウトロの「叫び」が、堪らなく切なくなる。本当にいい曲だと思う。

 

髪が伸びるたび 生きてるとわかるんだ

それだけが 僕を落ち着かせるんだ

 

波打ち際 突っ立って僕は息をしたんだ

それだけで僕は落ちつけるんだ

歌詞もすごく鬱っぽい。

「それだけで僕は落ちつける」とは歌うものの、「髪が伸びるたび生きてるとわかる」だの、さらには「波打ち際突っ立って」だの、完全に鬱状態の人間が言うことだろう、と思ってしまう。

でも、この暗い曲調に、こういう絶望的な歌詞って、なんだがとても心が震えてくる。絶望的だと言っておきながら、どこか希望を見出せるような、そんな気がするのだ。それに、何だがこの曲の主人公が、どうも“今の僕”に重なってしまう気がして、より切ない気持ちになってしまう。「アンダー」というタイトル通り、この曲は僕をこういったセンチメンタルな気持ちに連れ戻してくれる。くどいようだが、本当に名曲だ。

 

今正しい言葉や嘘や全ての裏

いつか気がついたとき 僕は叫び出す

やはりこれも、サカナクション自身のことなんだろうか。

この激しい演奏。山口さんの声。そしてこの歌詞。彼らは「叫んでいる」である。

 

ーー“嘘”や“全ての裏”に気がつくために。そして、“正しい言葉”を手に入れるために。

 

書きかけのノートに 線を引いてみたんだ

そこから下が新しい僕としました

本当に凄い歌詞だと思います、これは。名言ですよねぇ......!

 

 

8.シーラカンスと僕

これも名曲です。イントロのギターとシンセから泣きそうになります。切なくて。

サウンド上では前曲と音が繋がっていて、このアルバムの中では、「アンダー」と「シーラカンスと僕」は2曲で1曲という位置づけになっています。ライブでもよく、セットで歌われることが多いですし。「アンダー」に引き続き、深い海の底をイメージさせられるような情景描写、救いようのない後ろ向きな言葉が並ぶのです。

 

また、憂欝そうなサウンドに、哀しい歌詞が胸の内をキュッと締め付ける。

眠れずにテレビをつけたら

夜に見たニュースと同じで

淋しくなったんだ

出だしの山口さんのボーカルから既に切ない。このAメロのコード進行が秀逸すぎる。この曲では、「深海魚な僕」「灰色のビルはまるで珊瑚礁」といった海に関連する言葉を用いて、“憂欝な自分”の姿を巧みに隠喩している。ところが、この部分だけは、やけに現実的で人間臭い。人間としての自分が置かれている状況を描いたうえで、喩えるなら深海魚のような、不安定な自分の心を、これでもかってくらい鮮やかに歌い上げる。

だからこそ、この曲の主人公は、

どこかへ どこかへ行こうとする

泳いで 泳いで

というわけなのだ。

この「泳いで~♪ 泳いで~♪」の絶妙なメロディーラインが、泣けてくる......。

 

青い目とウロコで うろうろする僕はシーラカンス

どこかへ走り出しそう さよならする深い夜から

静かだった演奏が、ドラム、ベース、シンセによって突然激しくなる。

人間としての自分の中にある、“深海魚としての自分”が暴れ始める。どこかを彷徨い続けうろうろする姿。それはまるで青い目とウロコのシーラカンスのように。

走り出して、深い夜から、不安定な自分からさよならするのだ。

曖昧な若さを 無理に丸め ゴミだとした

どうか僕が僕のままあり続けられますように

これもまた凄い歌詞である。「曖昧な」自分自身を断ち切るための、強気な歌詞だ。

遠い過去を捨てて置いていくことで、未来へと泳いでいこうとする。そして、溢れそうな涙を堪えるように、切なくとも強い勇気をまとった自分を引き連れていく。

僕が心から望んでいるのは、やはり、

「どうか僕が僕のままあり続けられますように」。ただそれだけなのだから。

 

アウトロの演奏がもう本当に美しすぎて......涙が止まらなくなってしまう。

 

 

9.明日から

イントロの淡々としたシンセのリフレインから始まる曲。

悲しみは置き去り 「明日は明日」とつぶやく僕は一人

やはり、歌詞がとても暗い。先程までとは対照的に、サウンド面ではとても明るくてノリが良いのだが、やはり歌詞は暗い。「通り過ぎた日々は化石」というフレーズから、「シーラカンスと僕」の余韻がどこか残っている感じがする。

悲しみは雨か霧 「明日は明日」と泣く僕は一人きり

通り過ぎてしまう日々に 移り変わる季節を重ねたりするのさ

これ。とても共感せざるを得ない二行だと思う。

通り過ぎてしまう過去に、名残惜しさや悲しみや淋しさを感じても、それでも僕らは明日へと進まなければいけない。季節は移り変わるばかりで、思い出は二度と戻ってきたりはしない。僕らが生きていくうえで、「明日」ほど残酷なものはないのだ。否応もなしに、未来へと生き急がなければいけないから。

 

僕らは流されていくよ 「明日から」って何もかも捨てて

追いかけることさえできなくて

今日もまた一人考えてる

このアップテンポな曲調で、こんなことを歌う。やはり暗くて絶望的だ。

でも、ライブでは先程の「21.1」の次に、言わば一曲目として歌われたことがある。それだけ、盛り上がるには最適なサウンドだが、それだけでなく歌詞にも隠されたメッセージがあるのではと思った。確かに「明日から」という言葉は残酷ではあるが、それでも未来へ進むことを悔やんだところで、仕方がないのだ。だからこそ、僕らは「明日から」って何もかも捨てることになっても、時間の中を流されていくのである。

一見、救いようのない歌詞ではあるが、それでもこんな前向きな思いもあるんじゃないかな、なんて僕は思うのだが、みなさんはどう思うだろう?

 

間奏のシンセサイザーの、狂気に満ちたフレーズが非常に面白い。

 

 

10.表参道26時

サカナクションの中でも、特に異質な曲。

何がって、歌詞が山口さんには珍しいラブソングであること。サウンドがどことなく昔の邦楽みたいな雰囲気だったり、聴く人によっては完全に洋楽に聴こえる感じだったりすること。そしてサビの部分では山口さんではなく、草刈さんと岡崎さんの、完全なる女性ボーカルになっていますし。(これはのちに「仮面の街」でも使われますが)

いづれも、これらの心意気は、以前の彼らには見られなかったものである。

「表参道」とタイトルにあるように、上京後の東京を強く意識した結果であろうか。

 

イントロのギターストロークから格好いい。Bメロの「気づいてる♪ 気づいてる♪」の羅列も聴いているうちに、癖になってくる。実に耳心地がいい。そして例のサビでは、

つまらない夜に 話し始めたのはなぜ

意味もないのに左手で書いた名前

グラスで濡れた テーブルを指で吹いた

苦笑いして 握りしめた手には汗

表参道の26時が過ぎてく

先述した通り、ボーカルのパートが交代して草刈さんと岡崎さんの歌声が流れる。

歌詞も本人が公言した通り、「70年代の歌謡曲」っぽい感じがする。

あまりテーマにならないラブソングということもあって、やはり歌詞も少し異質だ。

これについては、山口さんがこう語っている。

僕は今まで歌詞をフィクションで書いたことがなかったんですが、今回はアルバムのテーマは『kikUUiki』ということで、僕もそれにチャレンジしてみたくなったんです。でも、書きながら笑ってしまって……(笑)。

出典:サカナクション インタビュー|MUSICSHELF

なるほど。「フィクションを描く」という"挑戦"なのか。

今作のタイトル『気空域』は、先述した通り本来混ざり合うことのないものが混ざり合う。という意味が込められている。そしてこの曲は、山口さんやサカナクションにとっての、「初の試み」が多く仕掛けられている。ある意味で、この曲もその本質にあるのではないか。だからこそ、ファンにも人気の楽曲なんだろうな、と思う。

 

歌詞カードには記載されていませんが、二番のサビのあとで、山口さんが、

「246左折 そう聞こえた 246左折」と歌っています。

つまりは心と心の隙間に風が吹いた

二人は所々 それを指で塞いだ

 

 

11.壁

これまたサカナクションに珍しいアコースティックギターアルペジオから始まる曲。

イントロ、Aメロはどちらかというとバンドというより、山口さんが一人で歌っているかのような静かなバラードで、これも中々異質な曲だな、と当初は感じたものだ。

そもそも、サカナクションって、アコギ使うんだ......というところから驚きで。

 

僕が覚悟を決めたのは 庭の花が咲く頃
君に話したらちょっぴり 淋しがってくれたね

歌詞に「覚悟」という言葉がある。これは“自殺”に関係しているとのことだ。

山口さん曰く、「自分は自殺を考えたことはないけれど、これは自殺の歌」と本人が公言していた。ということは、これも「表参道26時」に引き続き、フィクションの詞か。

しかし、そうとは思えないくらいに、リアリティを持った言葉が並べられている。

今一つ心配な事 それは家の猫の事
いつも僕が餌をあげていたから

この部分なんか、完全にそうだ。私小説という感覚でも読めるが、人によっては「実体験なんじゃないのか?」と思ってしまっても無理はないだろう。先述した通りだが、山口さんは今まで「フィクションを書いたことがなかった」と言っていた。とはいえ、今までの曲も、“ノンフィクション”だと言い切るのは少し難しく、歌詞カードを読んでいて現実なのか想像なのかが曖昧だ、っていう歌詞が多かった。個人的な意見だが、元々山口さんは小説的な歌詞を書くのが得意であったように感じる。

だから、この曲もかなりリアルな描写に仕上がったのでは、と思われる。

 

冷たい風が吹く夜
いつも僕は塞ぎがちになる

冷たい雨が降る夜
いつも君がそばにいて見ててくれた気がしたんだ

このBメロのコード進行は、いつ聴いても泣きそうになる。

このまま静かな演奏になるかと思いきや、ドラムが激しくなり、エレキギターが出現して、いっきにバンドサウンドが形成されていく。そして、サビではこんなことを歌う。

僕は壁さ 立ち向かう事すら出来ぬ壁さ
隣の家の窓から見える 温かそうなシチュー

いつも僕が一人で食べる夕食の味は
孤独の味がした気がするんだ

 「僕は壁さ 立ち向かう事すら出来ぬ壁さ」。重い。この言葉が心に重く圧し掛かる。

この歌詞には、僕もたいへん共感させられた。自分はいつも一人で、孤独でつらくて、となりの家の温かなそうなシチューを羨ましく感じてしまう、僕もそんな人間だ。

アウトロでは、「僕は壁さ 僕は壁さ」のフレーズだけが繰り返される。

さっきも言った通り、これは“自殺”の歌だ。それなのに、僕はこの曲を聴いて生きる希望をもらった。なぜかはよくわからないが、この切なく、共感を呼ぶ歌詞が僕の心を強く打ちつけたのだと思う。自分は無力で、立ち向かうこともできない壁だけど、それでも僕は生きているんだ、自殺するとは言ったけれどきっと明日も生き続けるんだ、そういうメッセージを感じたのである。これも本当に名曲である。

この歌詞が、多くの人を救う、大切な一曲になればいいなと僕も思う。

 

サカナクションの曲には、歌詞が絶望的だけど「どこか希望を感じる」曲が多い。

このアルバムでは「アンダー」「シーラカンスと僕」「明日から」「壁」、他には「ルーキー」「ネプトゥーヌス」「ユリイカ」などがそれに当たるのではと思う。

山口さんの歌詞は、ほんとうに興味深い。なぜこんな世界観を生み出せるのか。

 

 

12.目が明く藍色

このアルバムのラストにして、「過去最高の名曲」といわれるこの曲。

山口さん自身が「今までの曲のなかで一番好きな曲だ」と公言していました。

自分が初めてこの曲を聴いたのは彼らのライブの時で、本当にその時の衝撃はもう二度と忘れないと思います。そして今このCDを聴いているということを光栄に思います。

 

アルクアラウンド」とともに、Music Videoが公開されています。


サカナクション - 目が明く藍色(MUSIC VIDEO)

楽曲とともに、とても謎めいた感じの映像が7分間続きます。また、この動画のコメント欄もなかなか興味深い内容でいっぱいです。曲のエピソードだったり、歌詞に関してさまざまな解釈がされていたり。そのコメントの中から一部を引用させていただきながら、この曲についてこれから解説していきましょう。

 

この曲の序盤は、静かなギターストロークが爪弾かれる優しいバラードナンバー。

制服のほつれた糸 引きちぎって泣いた

変われない僕は目を閉じたまま また泣いた

制服の染みみたいな 嘘をついて泣いた

知りたいけど知りたくないことを知って 泣いた

まず出だしの歌詞から、既に泣きそうになってしまう。

「制服」という単語が若い自分を指している、という解釈もされているのだが、確かに今の僕がこの歌詞にピッタリ重なる気がする。「泣いた」と何回も繰り返されることから、大人になりたくない自分と、変わりたいのに変われない自分自身を悔やんでいる自分がいるともとれる。この曲の中では、そこが大きなテーマになると思われる。

 

藍色いや青い色した ずれて重なる光 探して 探して

では、この「藍色」と「青い色」の違いはなんだろう?

このことについてこのようなことを述べている方がいるので、引用させて頂こう。

サカナクションが作りたい音楽(歌詞でいう青色の部分)とリスナーが求めている音楽の間(黒の部分)のkikUUiki(藍色の部分)が今のサカナクションが作っている音楽って感じでしょうか。ジャケ写でも青と黒が混じっているkikUUikiの部分は藍色になってますよね…! 』

出典:eo aiuさんのコメントより

なるほど。言わばこの曲が、「kikUUiki」の核となる位置づけなのか。

では、そのうえでサカナクションは、この曲を通して何を伝えたいのか。この青と黒と藍色の部分で彷徨っている、自分の姿を暴かなければいけない、ということだ。

そのことは、次の転調部分で明らかになる。一瞬の変拍子からの、大きな転調。

 

光はライターの光 ユレテルユレテル

つまりは単純な光 ユレテルユレテル

ここで待ってるだけじゃ何も言えなくて

すれ違っていく人も何も言わなくて

さっきまでの緩やかな雰囲気が全く面影を見せなくなり、いっきに「黒い」曲調に。

この部分ではコーラスが何重にも重なっているが、これは『一般大衆の声』の声を表しているとのことだ。つまりは、自分の心の内と対比して、自分が大衆からどんな目で見られているか、その中で自分はどんな存在で、何の意味を果たしているのか、を一人で考えている、短編小説に喩えるならそんな場面”である。

そして、この部分は、やはりサカナクションの「闇」が露わになっている。先程までの「潮」「アンダー」「シーラカンスと僕」「明日から」「表参道26時」「壁」にあったような、どす黒さが総まとめになったような感じ。

先述した通り、彼らは迷っている。自分がやりたい音楽(青の部分)を心に抱えながら、藍色の光(kikUUiki)を求めるために、真っ黒な闇を彷徨っているのである。

間奏の激しいシンセソロが、とても格好いい。

メガアクアイイロ メガアクアイイロ メガアクアイイロ

メガアカイイロ

これはどういった意味なんだろうか。これまたコメント欄で面白い見解が出ている。

MEGAAKUAIRO(目が明く藍色)

U(You)が居ないと

MEGAAKAIRO(目が赤色) 泣いてしまう

出典:てらっしーさんのコメントより

衝撃を受けた。だから「kikUUiki」のUが大文字になっていたのか。

要は、「君がいないと僕は泣いてしまうんだよ」という言葉を、「目が明く藍色」という言葉で暗喩しているのである。だからサカナクションは藍色の光を求め続ける。彼らには、歌詞で言う「君」の存在が必要だから、どんな真っ黒な闇も彷徨い続けるのだ。

そして、この分厚いコーラスが終わるとともに、また曲調が最初に戻る。

 

制服はもう捨てた 僕は行く 行くんだ

また「青い」雰囲気が顔を見せるところで、僕は大きな感動を覚えた。

しばらく真っ黒な闇を彷徨ったけど、結局はこの青い空にもどってきた。そしてさっきの「泣いた」という内向的な言葉ではなく、「僕は行く」という前向きな決意を歌う。

そして、ラストのサビ。ここがもう最高に泣けてくる。

君の声を聴かせてよ ずっと

君の声を聴かせてよ ずっとずっと

君の声を聴く 息をすって すって

君の声を聴かせて

「君の声を聴かせてよ」の繰り返し。これがこのアルバムでサカナクションがいちばん伝えたかったことなんじゃないかな、と思う。「君の声を聴く息をすって」の部分が「kikUUiki」に掛かっているとも聞こえる。君の声。すなわち僕たちリスナーの声ではないだろうか。そしてサカナクションはそれを必要してくれる。だから、彼らは音楽を作り続けるし、僕たちはその音楽を聴き続けていくんだと思う。

アウトロの「ラーラララララーラー♪」のコーラスも、やばい。泣けるなぁ。

 

やっぱり僕はこの「目が明く藍色」が好きだ。そしてサカナクションが好きだ。

これからも、その素晴らしい音楽を僕らに聴かせてください。

 

みなさん、この記事を読んでくださってありがとうございました。

あなたにとってこの記事が、このアルバムとの出会いになればなぁ、と思います。

 

 

おまけ

「目が明く藍色」のアウトロの部分で、「ここっっ!」という声が聞こえますが、

これは、ドラムの江島さんに指示したくて、レコーディングの際に、「ここっっ!」って言ったのがそのまま入ってしまったんだそうです。面白いエピソードですね。(笑)